自殺の否定

 自殺をしてはいけない理由に対する納得は、「自殺の思想史」からは得られなかった。 過去の哲学者や神話の読み解きの具体例をしっかり読み込まなかったからかもしれない。けれど、結局「自殺の思想史」から学んだのは、「自殺は他人に波及するから自殺をしてはいけない」という意見だった。

 自殺は他人に波及するから自殺をしてはいけないとする著者(ジェニファー・マイケル・ヘクト)の意見には「そもそも人間が死んではいけない理由」が含まれていないため、いまいちピンと来なかった。

 今の自分は、人は死んで然るべきものだと考えている。事実、人はいずれ死ぬ。そもそも、人が生きるのに理由はない。道端を歩く蟻が勝手に生まれて勝手に死んでいくように、人も勝手に生まれて勝手に死んでいく。