定住不全

 自分を理解してくれる人間がほしいと思いながら、求める繋がりの像を満たす人間に出会わないままでいる。もし理想的な人間が現れ、これ以上ない強固な繋がりができたと思えたら、自分がどこにいることになっても構わない。今はそう思っている。

 数年単位で、その場しのぎの人間関係を構築してきた。これまでの人間関係が全てなくなってしまったらどうなると問われても、構わないと答えられる。それほどに、自分の居場所が感じられないままでいる。 本当は安らぎを見つけて定住したいけれど、今有る人間関係をかなぐり捨てて、どこか遠く離れた地で暮らしてみるのもいいなと思う。頭の悪い人間が組織や国を動かし続け、政治も経済もシステムも生活も安定しない日本は、本当にニュートラルな視点に立ってみると選択すべきではない定住地なのかもしれない。

 今、心は比較的安定している。騒がしい場に出ず、しばらく独りでいることで落ち着ける。これが長すぎると孤独を深めすぎることになるし、バランスを取るのが難しい。人のつながりに幅広く依存することで安定した精神状態を保てるのは分かるが、それでは身動きが取れないような気がする。孤独を利点として、今有る環境を抜け出してみてもいいかもしれない。他人と同じことをしていても面白くない。周囲の大勢が「いいね」を押したくなるようなことが本当に人生を豊かにするとは限らない。むしろ、他人の視点を排除することでしかわからない面白さ、充実、見いだせる美しさがあるかもしれない。それを探してみたい。